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【2024/11/23 01:57 】 |
なんだかよくわからないパロ その7



今回は王道の看病ネタ。戦争サンドっぽいですけど、たぶん臨帝♀。帝人がデレすぎて別人のようになってしまいました・・・・・。でも熱出すと皆弱くなりますよ、ね?


次ぐらいで『怠惰』を出そうと思っています。ちょこちょこ『怠惰』に関してヒントのようなものを作中にちりばめてきたので、皆さん誰だかおわかりだと思います










扉を開ける前から自分がここにいることがわかっていたのだろう男の、額に浮かんだ今にもブチリなんて音が聞こえてきそうな血管や噛み千切られて地面に落下したまだ火をつけて間もなかったのだろう煙草に臨也は辟易した。それでも静雄が臨也を殺そうとしないのは、今、自分たちが立っている場所が、最愛の『妹』が住居としている部屋の玄関先だからだ。


「ちょっと、入るならさっさとしてよ。いつまでもドアを開けっ放しにしとくわけにはいかないじゃん」


「なんでテメエがここにいやがる」


「言っとくけど押しかけたわけでも不法侵入したわけでもないから。家主の許可はもらっている。理由は、ほら、あの子に訊きなよ」


会話が出来る状態なら、ね。その言葉の意味を静雄が苛立たしげに視線で促す。そういえば彼は回りくどい言い回しが嫌いだった。しかし百聞は一見にしかずと言う言葉もある。臨也が肩をすくめて部屋の奥を示すと、静雄もこれ以上臨也と会話を続けるのは嫌だったらしく、靴を脱ぐとのそのそと熊を髣髴とさせる緩慢な動きで部屋へあがりこんだ。彼が臨也の顔面に投げようとして懸命に思いとどまったビニール袋の中身はなんだろうと思いながら、臨也は部屋の奥にしかれた薄っぺらい蒲団に寝かされている帝人を視界に入れて硬直している静雄の後頭部を眺めた。


「っ! みか――――」


「黙れうるさい。熱あるんだから起こすな」


叫びかけた静雄を制して、寝ている帝人の枕元へ腰を降ろす。彼女の額に張ってある冷えピタが温くなっていることを触って確認すると、立ち上がって冷蔵庫の中から新しい冷えピタの箱を取り出した。


「38度も熱があるくせにやせ我慢して学校行って、結局ぶっ倒れたから保護者装って迎えに行ったんだよ。風邪じゃないから薬なんていらないけど、たぶん長引くだろうね」


自身の経験から理由を察した静雄が、それでも納得していない表情をする。まあそうだろうなと、臨也も思う。臨也も同じ理由で寝込んだことは何回かあるか、こんな高熱を出したりぶっ倒れたりするなんてことは一度もなかった。


「『強欲』はね、強すぎるんだ」


昨夜大勢の人間の意識に干渉した帝人。それがどれほど身体と心に負担をかけるのか、彼女が知らないはずがない。


「俺の『傲慢』もシズちゃんの『憤怒』も、他の『怠惰』や『嫉妬』や『暴食』や『色欲』も、全てなにかを『したい』という感情だから、根っこで『強欲』と繋がってる。だからこの子は俺たちなんかよりもずっと引きずられやすいし、引きずられてこんなにも苦しんでいる」


人の欲には限りがない。無限に湧き出すそれを小さな身体で受け止め、理解し、掌握するのは臨也が他人の『傲慢』な感情をいたずらに燻らせるのとはわけが違う。昨夜の人数を考えると、発狂していてもおかしくはない。通行人とすれ違うだけで帝人にとっては苦痛だろうに。


そのことを考えると、日本という国の首都である東京ほど帝人にとって暮らしにくい場所はない。多くの人間が集まるということは、それだけ脳が感受する『欲』が多いということだ。きっと帝人自身、それを理解したうえでこの歳になるまで故郷から出てこなかったのだろう。自分の身体が、心が、他人の『欲』に耐え切れるその日まで。その生き様はなんて、


「『強欲』な、子」


非日常に憧れ、それを手に入れるためだけに発狂する危険を冒してまでこの土地に移り住んだ、その生き様はまさしく『強欲』。自分の『欲』のためなら自分さえ犠牲にしてみせる、強すぎる『欲』


人肌にまで温まってしまった冷えピタをはがし、新しい冷えピタを帝人の額に貼る。起こさないように慎重にしたのだが、冷たい冷えピタの感触に驚いたのか帝人のまつげが震えた。しまった、と臨也が思うのと同時にゆるゆると帝人の瞼が上がっていき、大きな黒い瞳と目が合った。


「おはよう。ごめんね、起こしちゃった?」


「兄さま・・・・・・と、憤怒の兄さままで」


部屋の隅であぐらをかいていた静雄が、上半身を蒲団から起こした帝人の視線に応えるように片手を上げる。その手に握られているビニール袋が揺れ、ちらりと見えたその中身はどうやらプリンのようだ。


「たくさんもらったからわけてやろうと思ったんだけどよ・・・・・・お前、大丈夫か? 熱はどうだ? なんか食べたいものとかないか?」


「大丈夫です、兄さま。身体もけっこう楽になってきましたし」


「残念だけど38度の熱を我慢しようとした子の大丈夫は聞けないよ。はい、体温計。これで熱測って。シズちゃんはコンビニかどっか行ってスポーツドリンクとゼリー買ってきてよ。あとレトルトのお粥」


「テメエが行ってくりゃいいだろ。命令するな口開くなむしろ死ね」


「別に俺が行ってもいいんだけど、シズちゃん看病できるの? うっかり力入れすぎて潰しちゃいましたとか洒落にならないからね」


臨也が言い返すと、さすがに完璧に看病できる自信がなかったらしい静雄が無言で立ち上がって部屋から出て行く。臨也もコンビニから帰ってきたら妹が潰れてましたなんて惨劇は避けたい。帝人が差し出した体温計が37度を示しているのを確認すると、再び帝人を蒲団に寝かせて汗で額に張り付いた彼女の髪を指先で整えた。


「まったく無茶する子だね。あ、迎えに行く時に俺と君は従兄妹ってことにしちゃったから、学校で何か聞かれたら適当に話しを合わせておいて」


「従兄妹って・・・・・・ああ、そうでしたね。傲慢の兄さまなら、そんなことは簡単ですね」


臨也が生業としている職業を思い出したらしい帝人が、納得したような顔をする。疑問が解決した安堵からかはわからないが、とろんと帝人の瞳が潤み、眠そうに欠伸をかみ殺し始める。


「眠い? なら寝たほうがいい。まだ少し熱あるしね」


「でも・・・・憤怒の兄さま、が」


「食べ物だったら起きてからでも食べれるだろう? お粥もちゃんとできたてを用意してあげるよ」


約束してあげる、と臨也が言うのに、それでも帝人は幼い顔を渋面にして食い下がる。なにをそんなに惜しんでいるのか臨也にはわからず、とりあえず寝ろという意味を込めて掛け布団を帝人の顔まで被せた。


「ほらほら早く寝る。熱が下がるまで学校行かせないからね」


「だって、寝ちゃったら・・・・」


蒲団越しにくぐもった声が聞こえ、掛け布団から帝人の手だけがまるで何をか探すかのように、さまよい出てきた。


「起きたら兄さまが、いないかもしれないじゃないですか」


その言葉に臨也は目を丸くする。そういえば、と思い出す。『起きた』時にはすでに周りに静雄や他の『兄弟』がいた臨也と異なって、隣に誰もいなかったこの『妹』はひとりになることを厭う。ひとりぼっちの寂しさを、虚無を、酷く嫌う。


「じゃあほら、君が寝てもずっと、起きるまで手を繋いでてあげる」


畳の上を這っていた帝人の手を掴む。まるで恋人同士が行うかのように指先を絡めて、帝人の自分のそれよりも小さな指先に軽く口付けた。まるで縋りつくかのようにぎゅうと臨也の手を握り締めてくる帝人の、布団越しに聞こえた寝息にどこか安堵しながら、臨也は窓の外の橙から濃紺に変わる空をずっと眺めていた。



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【2010/12/06 23:14 】 | 未選択 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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