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今年初めての更新が男娼帝人とかね・・・・・いや好きですけど。JINを観てたらついつい書きたくなっちゃったんです。野風さんかっこいいよ! 最後の野風と龍馬の『まだ雪になりたいがか?』 『まっぴらごめんでありんす』が大好きです。野風さんマジかっこいいよ・・・・・ というわけで男娼パロで臨帝です。別に男娼パロだから『裏』に入れたわけではなく、このパロは ●帝人の名前が出てこない(でもちゃんと帝人くんだよ!) ●帝人くんが始終ありんす言葉を使っている 以上の点から特殊設定に定めました。作中に出てくるありんす言葉や陰間については下記のサイトを参考にさせていただきました。ありんす言葉って宿や階級によって違ったりするらしいので色々と間違っている可能性大なのですが、そのあたりはスルーしてください。 ありんす言葉について 陰間について 題名は選択式御題さまよりお借りしました 部屋に入って早々に、あげる、と彼の手に持ってきたそれを放ると、条件反射で受け取った少年はその手の中に目をむいた。しゃらん、と彼の手の中で金と銀のかんざしが音を立てる。臨也がこうして土産を持ってくるのは初めてのことではないのだからそう驚かなくてもいいのにと思うのだが、いつだって彼はくるくると表情を変えて臨也を飽きさせることがない。
「折原さまはほんに奇妙なお方でありんす。このような子供に、このようなものをお与えになるなんて」
「ふぅん、そんなこと言っちゃうの? こんなに可愛がってあげているのに。ねぇ、千草?」
「・・・・・・竜胆と、お呼びなんし」
「だぁめ、俺がつけた名前だ。そうだろう、千草」
臨也がくすくすと笑うと、千草と呼ばれ、竜胆と呼ぶように頼んだ少年は拗ねたように唇を尖らせた。ここでは、少なくとも臨也が買った時間の内だけは、臨也が全てだから彼が断われるはずもない。しかし彼を買った片仕舞は金一両と二分、その金は決して彼を拗ねらせるためだけに使ったわけではない。
「おいで、千草。かんざしをつけてあげる」
こいこいと呼ぶと、豪奢な着物をひきずって少年は臨也の膝元までやってきた。すでに飾られている彼の髪形を崩さぬように慎重にかんざしを挿す。他のかんざしに埋もれてしまうそれを、臨也は目を細めて眺めた。
「鏡見る?」
「いいえ。折原さまがお選びになったのなら、わっちによう似合うものでありんしょう」
「おやおや、俺もずいぶんと買われてるねえ」
少年はふいと臨也から目をそらした。買われてるなんて、と臨也は己の言葉を笑う。彼を買ったのは自分の方だ。半日分の時間、彼を買ったのだ。この陰間茶屋ではその契約だけが全てで、金さえ出せば彼の一生を買うことだってできる。
「千草、そろそろ俺に身請けされる決心はついた?」
彼の細い腰を抱き寄せて、口付けを落とすかのように耳朶に囁く。なにかに怯えるかのようにびくりと震えたその身体を強く抱きしめて、臨也は泣きそうな顔をする少年に笑いかけた。
「やだなあ、これ。まるで俺がいじめているみたい」
「まさしくからかっておられるのでございましょう?」
決心など、と少年は囁く。身請けに決心など要らない。店の主人を通して正式に申し込まれた身請けを断るすべなど、彼らは持たないのだから。本気で臨也が彼を身請けしたいのなら店主に直接言えばそれで済んでしまう話なのだ。わざわざ決心はついたかと問う、それ以上の戯れなどない。
「男娼などを身請けして、折原さまはどうなされるおつもりでありんすか? わっちなどあと数年もすれば、男娼としての価値すらなくなりんす」
「君は今が盛りの花だろう? 十分価値がある」
「それも三年のうちだけ。散る花を憐れむとおっしゃられるのでしたら、どうぞ違う花になさりなんし。わっちはごめんでありんす」
男娼の一生は短い。今年で15になる彼は今が一番盛りの時で、19を過ぎれば引退するか、女性の相手をするしかない。臨也と寝るときだって未だに頬を染めるこの子供が女性の相手を務められるなど、臨也にはとうてい思えない。
「じゃあ代わりに」
身請けの話が断られることなど最初から予想していた。臨也は抱き寄せた少年の頬にそっと指を這わせて、こちらを射抜くような彼の瞳と目を合わせた。臨也の機嫌を損ねたら店主にどんな折檻をされるか知った上で、それでも臨也を睨みつけるその気性を、欲しいと思う。
「君の名前を教えて」
少年が怪訝そうな顔をする。最初に名乗られた竜胆という名を嫌い、彼に千草という名を与えたのはまさしく臨也なのだ。それなのに名を教えろと言う、その意味を目の前の子供は理解しきれないようだ。
「君の本当の名前。あるだろう? 産みの親からもらった名前がさ」
竜胆という名は号にすぎない。臨也が与えた千草も、また同じく。そんなもの、臨也は欲しくない。身請けできないというのならせめて、彼を示す唯一が欲しい。
「真の名など、この竜胆にはございませんよ」
そっと目を伏せて、少年は触れたら溶けてしまいそうな笑みを浮かべた。
「赤子の時にここに売られて、親父殿に竜胆と名付けていただきんした。それからずぅっと、わっちは竜胆でありんす。三つや四つの時に売られた者ならば、産みの親からいただいた名を持っていたでありんしょうが」
羨ましい話でありんすと、少年はそっと呟いた。彼はその命と身体以外、何も与えられなかったのだ。彼を包む豪華な着物も、彼を飾るかんざしも、彼を彩る紅も、この部屋にあるものすべてを、彼はその身ひとつで稼いできたのだ。
「折原さま、竜胆はどこにも行かないのではございません。どこにも行けないのでありんす。ここで育ったわっちには、外の世界など想像もつかぬ異国でありんす。そんなところでは竜胆は生きていけませぬ。折原さま」
しゃらん、と彼の頭で臨也が贈ったかんざしが揺れた。
「井戸の中にいる蛙は、井戸の中にいるべきでありんす」
そうして、井戸の中で一生を終えるべきなのだと、彼は言った。残酷なことを言う。だとしたら、いったい臨也はどうしたらいいのだろう。井戸の外から手を差し伸べるだけの臨也は、いったいどうしたらその蛙に大海を見せることができるのだろうか。
「あぁーあ、振られちゃった。全く、この俺を袖にするなんて。君くらいのものだよ、千草」
けらけらと笑って、臨也は真っ赤な布団の上に彼を押し倒した。この瞬間の、紅の布団の上に散る彼の髪がなんともいえない劣情を誘うから、実は臨也はこの後の情事よりもこの瞬間が好きだったりする。
「千草、千草。そうやって君はどれだけの男をかどわかして――――そして、別れてきたのかな」
「今は、折原さまだけのものでありんす。ほかの方の名を出すのは無粋というものでございましょう」
しゅるりと帯がほどかれる。垣間見えた白い肌に唇を寄せるが、決して痕をつけてはならない。彼は『今だけ』臨也のものであるが、それもあと数時間で終わる。決して情事の名残をつけないのがここのしきたりであった。
「折原さま。お尋ねしてもよろしいでありんすか」
臨也の唇や指の動きに声をもらす少年の顔を覗き込んで、臨也は無言で先を促した。
「どうして折原さまはわっちに、千草という名をお与えになりんした?」
今更なその質問に臨也は動きを止めた。彼を千草と呼び始めてもう両手の数以上の月日が流れて、両手の数以上の逢瀬を重ねた。それなのに彼は一度だって、その理由を尋ねることはしなかった。だからまさか、今になって尋ねられるなんて。
「似合うと思ったからさ」
初めて会ったあの瞬間を思い出してそっと感情を舌先に乗せた。初めて会った時も彼は、射抜くような視線で臨也を見て、すぐに興味なさそうにそらしたのだ。多くの遊女に金はいらないからとまで言われた臨也は酷く驚いて―――――――――酷く、興奮したのを覚えている。氷のように静かなくせに炎のように燃え盛る瞳を、自分にくぎ付けにしたいと思ったのだ。
「竜胆よりもさ、千草のほうが君に似合うと思ったんだよ。千草色って、わかるだろう?」
露草の花のような明るい青は親しまれ、よく使われている。街中どこにでも溢れているその色が、竜胆のようなどこまでも深い青紫よりは、特に美しいわけでもないこの少年に似合うと思ったのだ。
「それは―――――」
なにかを言おうとした少年の唇を自分のそれで塞ぐ。自分のものにならない音など聞きたくはなかった。重ねた手のひらに力を込めて、ねっとりと舌先で彼の上顎を舐める。何度触れ合っても慣れることのない彼の震える肩を抑え込んで、そのまま唇を貪った。場慣れしているはずなのに、いまだに彼は鼻で息をすることを覚えなくて、酸素不足でその頬を赤く染まっていた。臨也はその扇情的な姿に満足そうに目を細める。この姿を知っているのは自分だけではないと考えると嫉妬で目の前が赤く染まったが、千草と呼ばれて返事をする、今だけ彼は臨也のモノだ。
だれのものにもならないしなれもしないのでしょう あんたってひとは PR |
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