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【2024/11/23 06:42 】 |
なんだかよくわからないパロ その16


そもそも二巻って帝人が全く絡まないので、できる限り原作沿いにしつつもどうにか隙間に帝人をねじ込みながら話を展開させるのがものすごく難しいです。なので話がぽんぽん飛ぶ仕様です。出てこない場面は原作と同じなのだと思ってください


今回は臨也視点で臨也+静雄+帝人、ついでにセルティ。久しぶりに長い、です・・・・・








「なーんでシズちゃんが俺のマンションの前にいるのかな?」


ちょっと電池が入用になってコンビニで買ったその帰り、マンションの扉を全力で蹴破ろうとしている『兄弟』の姿を視界に納めて、臨也は苦虫を二桁単位で噛み潰したような顔をした。いることはわかっていたけれど、あと少し帰ってくるのが遅かったら扉を壊されていたのだろうことを考えると、嫌々ながらも回り道をしないでよかったと思う。


「お前を殴りに来たからに決まってんだろう」


唇の端だけつり上げて笑う男の目は笑っておらず、全身全霊から放たれた怒気がびしびしと臨也の身体に突き刺さってくる。どれだろう、と臨也は考える。彼が臨也を殴りに来る理由は腐るほどある。


このまま警察に連絡して昔のようにパトカーを巻き込んだ追いかけっこをしてもいいのだが、臨也はこの時期に彼が自分を殴りに来る理由にひとつ心当たりがあったので、にやりと笑うと湧き出す嫌悪感を黙殺してそのまま静雄の相手を続行した。


「なんで、殴られなくちゃいけないのかな?」


「ムシャクシャしたからだ」


「・・・・・・・いい年してそういうジャイアニズム100%な台詞は良くないよシズちゃん」


「うるせえな。あえて言うなら・・・・・・手前が怪しいからだ」


その台詞にぴくりと臨也の眉が動く。彼のことだから臨也を怪しむことになんの根拠も持っていたいのだろうが、野生動物じみた静雄の勘が案外侮れないことを臨也は長年の付き合いから知っていた。


「怪しいって何が」


「今、俺の街で騒いでる辻斬りの件・・・・・・・手前は、どこまで絡んでる?」


静雄の発言は決して物事の核心を衝いてはいなかった。けれども何の根拠も確証もないただの勘だけの発言であることを考えると、恐ろしいくらい的確な発言だった。


「なんで俺が絡むのさ」


「わけがわかんねーで物騒な事件は、99%手前が絡んでるからだ」


「残り1%を信じてくれないかな・・・・・・・」


「1%でも手前が信じられる要素のある奴だったら、多分俺と手前はもっと上手くいってただろうよ。なあ・・・・・イザヤ君よぉ?」


それもそうだろうと臨也は思う。静雄の認識は正確ではないが間違ってもいない。確かに臨也は信用できる要素など欠片もない男だが、決して物事の全てを把握しているはけではないのだ。くつくつと笑いながら、臨也はふと静雄と上手くいっていたかもしれない仮定の未来を少しだけ想像して、胃酸が食道を逆流してくる感覚を覚えた。


自身の台詞に過去のアレコレを思い出したらしい静雄の額にみるみるうちに血管が浮き出していく。あのままぷつんと切れて脳出血かなにかで死ねばいいのに、と臨也は思った。



「辻斬りの件が無かったとしてもよぉー、最近のブクロはなんか変だ。手前が原因だろ、ええ? 一体何をたくらんでやがる」


「酷い言いがかりもあったもんだね。騒ぎの火種なんてこの街には俺以外にもごろごろしてるのに。例えば――――とっても強欲なあの子、とか」


匂わせた少女の存在に、静雄が怪訝そうに眉を寄せた。


「なに馬鹿言ってんだ。手前なんかと帝人を一緒にすんじゃねえよ」


「一緒、とまではいかないけれどね。馬鹿だねシズちゃん。あの子が普通の子じゃないってことぐらい、知ってるくせに」


帝人はそこらへんにダース単位で歩いている女子高校生とは思考回路も行動概念もなにもかもが違う。火種、とは言わないだろう。あえていうのなら彼女は、臨也が作った焚き火の中にそうとは知らずにガソリンを抱えて突っ込むような子だ。少なくとも、静雄が思っているような可愛らしいだけの子ではない。


臨也はコートのポケットからナイフを出すと、それを片手でくるりと回転させた。その動作の意味に気付いたらしい静雄がにやりと不敵に笑って、おもむろにマンションの前にあるガードレールに手を置いた。


「?」


その行動の意味がわからず――――正確にはわからないこともなかったのだけれどもあまりにも人間離れしすぎていて可能性としてカウントしていなかった――――どう動くか迷っていた臨也は、静雄がガードレールに置いた手に力を入れ始めた辺りでようやく、自身がカウントしなかった可能性、すなわち目の前の男がよりにもよってガードレールを引っこ抜いてそれを武器にしようとしているのだということに気がついて、二月だというのに背中に冷や汗が吹き出たのを感じた。


その時臨也の脳裏に浮かんだ言葉は『先手必勝』と『殺られるまえに殺れ』。


臨也が顔から笑みを消してナイフを静雄目掛けて振り上げた――――その時、


「そこまでです、兄さまたち」


ぶわりと湧いた夜の闇より濃い『影』と聞き覚えのある声。触れれば爆ぜる二人の間に割ってはいった黒バイクの後部座席にちょこんと座る少女の姿を確認して、珍しく臨也の顔に驚きが浮かんだ。


「いい年して喧嘩とか、本当にどうしようもない兄さまたちですね。セルティさん、お願いします」


『影』から切り取ったような黒のフェイスフェルメットの下から出てきた顔は呆れの色とともにどこか焦りも含んでいた。帝人の言葉を受けたセルティは静雄になにやらPDAの画面を見せているようで、その内容はここからでは確認できない。


「いくらセルティが一緒とはいえ、深夜徘徊は感心しないね、帝人ちゃん」


「緊急事態ですので見逃してください、兄さま。時間がないので単刀直入に訊きます」


この事件の犯人はあなたですか? その質問は笑ってはぐらかしても良かったのが、こちらを見る帝人の視線がまるで日本刀のような鋭さを帯びていたので、臨也はわが身可愛さにその考えを打ち消す。


「そうだね――――犯人は、俺ではないよ」


そう答えると帝人は静かにそうですか、とだけ答えた。


「では最後にもうひとつ。この通り魔は強欲(ぼく)所有物(てき) です。余計なちょっかいを出すようでしたら、兄さまでも許しませんよ」


「それは・・・・・・・・・怖いね」


臨也が肩をすくめると、先ほどよりかはいくらか剣呑さを消した帝人はうっすらと微笑んだ。その笑みは何の意味を持つのか――――安堵か、または愉悦か――――臨也にはわからない。


「おい臨也。これも手前の計算か?」


説明が済んだらしい静雄が怪訝そうな顔でそう尋ねてきたが、状況を尋ねたいのはむしろ臨也のほうだ。


「なんの事か知らないけど、セルティと帝人ちゃんが偶然ここに来てくれる事まで計算できるなら、俺はとっくに君の家に隕石でも落としてるよ」


しばらく静雄は何かを見定めるように臨也を見ていたが、やがて舌打ちひとつで引き下がると、大人しくセルティのバイクに跨った。セルティがせっせと『影』でサイドカーを作り上げているところを見ると、結局帝人もついていくのだろう。臨也は慣れない手つきでフェイスフェルメットをかぶりなおしている帝人のところへ行くと、そっと彼女の耳に囁いた。


「園原杏里については、もう気付いているんだろう?」


はっと見開かれた瞳。臨也はそれ以上何も言わず、ただ笑いながらいってらっしゃい、と彼女の背を押した。見送りに相応しい軽さと、まるで崖の上から突き落とすような重さを伴って。






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【2011/02/17 23:33 】 | 未選択 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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